2020年6月8日|最新情報更新しました
- 竹節 倫敦(たけふし ともあつ)
- 専門資格:ガス給湯器などの設置施工に必要不可欠な液化石油ガス設備士(国家資格)に加え、高圧ガス販売主任者第二種、丙種ガス主任技術者の資格も保有している。
洗い物やお風呂など毎日使用するガス給湯器ですが、家電製品などと同様に使い続けることで経年劣化により寿命を迎え、使えなくなってしまうことがあります。
ある日急に故障して困らないように、ある程度の寿命を目安として確認しておきましょう。
ガス給湯器の耐用年数と寿命年数の基本
給湯器の耐用年数とは
まず、ガス給湯器の耐用年数という表現は、国税庁が定める資産の減価償却等で登場する内容であり、ガス機器業界(機器故障に関する内容)ではあまり「耐用年数」という言葉は使いません。
給湯器の商品開発(設計)の目線で言えば、「設計標準使用期間」が適当な表現となります。
給湯器の寿命年数とは
ガス給湯器は、修理不能で直らない状態になって初めて「寿命」を迎えます。
機器寿命は、使用環境や使用頻度、使用機種によっても故障するタイミングは異なるため、「各ご家庭の給湯器の寿命年数はバラバラである」が正しい答えです。
販売店や一般消費者がよく表現するガス給湯器の「寿命年数」は、経済産業省や業界団体、給湯器メーカーでは「交換時期・取替時期・点検の目安・設計標準使用期間」と表現することが多いのです。
一例として、ガス給湯器大手のノーリツの公式見解を紹介します。
Q 給湯機器の寿命って何年くらいですか。
A 使用頻度や使用環境が個々のお客さまで異なりますので、寿命・耐用年数 という表現はしておりません。
標準的な使用条件のもとで使用した場合、安全上支障がなく使用することができる期間(設計上の標準使用期間) として、10年を目安としています。
ご覧いただいたように、ガス給湯器の実使用において「寿命年数」や「耐用年数」という表現は適当ではないことがわかります。
給湯器の交換・点検の目安は10年
消費者の皆さんが一番知りたいのは、大きく次の2つと考えます。
- 給湯器は何年ぐらい使えるのか?(まだまだ使いたい気持ち)
- 給湯器の交換の目安は何年ぐらいなのか?(使い続けて大丈夫なのか不安)
先ほど紹介したノーリツは10年でしたが、リンナイやパロマの公式見解も見てみましょう。
ガス給湯器にも寿命があります。ガス給湯器の点検・取替えの目安は10年です。
リンナイの場合も、「ガス給湯器の点検・取替の目安は10年」とアナウンスしています。
次にパロマですが、ノーリツやリンナイとは違い「寿命年数」でアナウンスしています。
質問
給湯器の取替時期はどれくらいですか?回答
ガス給湯器は8~10年くらいが寿命といわれています。
8~10年以上使用されている場合は、一度点検をおすすめいたします。引用元:よくあるご質問(株式会社パロマ)
ただ、ご覧いただいたらわかるように「ガス給湯器は8~10年くらいが寿命といわれています。」という表現であり、あくまでも一般論として「8~10年使ったら点検してね!」という内容です。
メーカーや販売店などで考え方はやや異なる場合もありますが、給湯器の点検や交換の目安は基本的に「10年」です。根拠は大きく3つあります。
1)設計標準使用期間が10年
ガス給湯器の本体に貼られているラベルや取扱説明書を見ると、「設計標準使用期間」や「設計上の標準使用期間」は「10年」と書かれている場合があります。
屋内式と屋外式で呼び方が異なるのですが、基本的な内容は同じで、「安全のために10年使ったら点検してね!」という内容です。
2)修理部品の供給期限が10年
給湯器の生産が終了してから10年目以降は、メーカーが修理用の部品を保有しておく義務はありません。つまり、10年以上使って故障すると、部品がない可能性があるということです。
実際には型式Aが生産終了しても、型式Bで同じ部品が使われていれば、型式Bが生産終了後からカウントが始まるので、必ずしも10年で全ての部品がなくなるわけではありません。
ただ、極論を言えば、使用10年1ヶ月目で給湯器が故障して、部品の供給期限が切れていた場合、修理不能で結果的に「給湯器の寿命」を迎えるケースがあるということです。
3)10年前後から事故のリスクが急増する
給湯器の設計標準使用期間を過ぎて、点検も受けずに使い続けると重大事故に繋がるリスクが高くなります。
事実、10年前後から急増するデータも出ており、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)は、使用期間10年を目安に給湯機の点検を受けるよう、呼びかけをしています。
参考:使用期間10年を目安に給湯機や食洗機等は点検を受けましょう ~経年劣化による事故を防ぐ「長期使用製品安全点検制度」~
10年で交換・点検は国の見解でもある
「経済産業省」と「一般社団法人 日本ガス石油機器工業会」が連名チラシで以下のアナウンスもしています。
ガス給湯機・石油給湯機にも寿命があります!!
給湯機 10年たったら点検・取替を
このように、「寿命年数」という明確な定義こそありませんが、「点検・交換・取替の目安は10年」という内容は、国の公式見解でもあります。
しかし、消費者目線で考えれば、10年は短すぎ!15年は使いたい!動いている間は使いたい!というのが心情です。実際に安全性は別として、「ウチは20年以上使っている、30年近く使っている」というようなご家庭も稀に存在します。
では、できるだけ長く使いたい場合はどうすればよいのでしょうか?
給湯器を10年以上使うことについて
ここまで、「10年」というワードが連発しましたが、決して10年で給湯器を交換しなければいけないということではありません。
10年以上使っているご家庭も多い
給湯器の買い替えの目安を10年程度と意識されている方も多いですが、10~15年使われる方は少なくありません。
特にマンションなどでは設置場所の関係で雨風の影響が少なく、さらには給湯器の存在感が薄いこともあり、15年以上経ってから買い替えされるケースも多い印象です。
ですが、戸建てでもマンションでも、点検を受けずに10年以上使うことはリスク大と認識することが必要です。
長く使うメリットは?
給湯器を長く使うメリットはただ一つ。
給湯器の購入費用が長く使う分だけ節約になるということです。
デメリットも知っておく
一方、長く使うデメリットはたくさんあります。
- 10年以降は定期的な点検費用がかかる
- 費用節約で点検を受けなければ、事故のリスクが高くなる
- 部品の経年劣化で燃費(燃焼効率)が悪くなり、ガス代が高くなる
- ある日突然、お湯が出ない日がくる可能性が高くなる
- 急に壊れて焦って交換検討した結果、業者に足元を見られて高い見積りになる可能性が非常に高くなる
節約のために長く使っても、結果的には損する事例も少なくないことを是非知っておいてください。
経年劣化のサインを意識する
ガス給湯器は不調のサインを消費者に発信していることがあります。
私たちは「給湯器が動いてお湯が出ている=正常!とは限らない」ことを理解しておく必要があります。
こんな症状が出ていれば、給湯器の故障や寿命の前兆かもしれません。
- お湯の温度が安定しない
- 設定温度にならない
- おいだきができない
- 異音がする
- 排気口まわりにすすがついている
- 排気口まわりや前板が錆びている
- ガス臭い
- 水漏れしている
- 煙が出ている
- エラーが何度も発生する
一つでも該当すれば、寿命が近い(経年劣化が進んでいる)可能性もあります。お湯が出ている今の間に点検や交換の検討準備を始めることをおすすめします。
安全・安心のために点検を受ける
給湯器の点検にもいろいろありますが、まずは点検の必要性と経年劣化とは何なのかを知ることから始めましょう。
そこで、一般社団法人日本ガス石油機器工業会が提供している動画を一つ共有します。(他にもシリーズがあります)
今回は、マンションにお住いの鈴木さん宅がモチーフのわかりやすい動画です。
ガス給湯器はマンションの共用廊下に設置されているタイプで、使用年数は18年という設定です。
毎日お湯を使っていても、お湯を作っている給湯器がどこに設置されているかを知らない人は意外に多いです。そしてそれは、給湯器のお掃除をしていない人も多いということになります。
ガス給湯器の寿命を長くする秘訣
給湯器本体の掃除の大切さ
ガス給湯器は本体(外観)のお手入れも必要です。
特に給気口などに汚れや埃などが蓄積すると、排気不良などの原因になり、結果的に給湯器の寿命が短くなる可能性が出てきます。
給湯器の掃除をすることで、異音や錆、劣化などの異変にも気づきやすくなります。
アダプターや配管の掃除の大切さ
ふろ自動湯はり・追い焚き機能がある場合は、循環アダプターや追い焚き配管の掃除は必須です。
掃除を怠れば、湯垢などが詰まったり、弁が固着したり、ポンプの負荷が増えたりするリスクが高まり、結果的に部品寿命を短くしてしまいます。
循環アダプターの掃除
フィルター掃除は、できれば一週間に一度ぐらいは行ってあげることが理想です。
追い焚き配管の掃除
追い焚き配管は1~2ヶ月に一度のお手入れで構いません。
他にもリモコンやストレーナ(水抜き栓)などの掃除も必要なので、一度、取扱説明書を読んでみることをおすすめします。
ガスコンロはお手入れしても、給湯器をお手入れされている方は非常に少ないので、給湯器の寿命を長くするために、できることから始めてみてください。
文:ガス専科編集部 記事監修:竹節 倫敦(液化石油ガス設備士)
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