省エネ住宅やゼロエネルギー住宅が注目される中で、オール電化の住宅は人気を集めています。しかし、オール電化の住宅に住み続ける中で次のような悩みを持つ方は多いです。
- 「光熱費が思っていたより高い」
- 「災害時に心配がある」
- 「ガスを使いたい」
- 「電気とガスを併用したい」
「オール電化からガスへ切替るのはどう?」「オール電化から、電気とガスの併用住宅は可能?」など、気にされる方も増えてきています。
この場合は、オール電化住宅にガスを取り入れることになりますが、ガスを取り入れる際にはさまざまな工事や手続きが必要になります。
そこで、この記事では、次の項目を中心に紹介します。
- オール電化住宅にガスを取り入れるメリット・デメリット
- 電気とガスのランニングコスト比較
- オール電化住宅にガスを取り入れる方法や費用の目安
- オール電化住宅に住み続ける場合に備えておきたいもの
オール電化の住宅に住んでいて、ガスを取り入れたいと考えている方や、電気・ガス併用住宅に興味がある方は参考にしてください。
目次
「オール電化住宅」と「ガス住宅」、メリット・デメリットは?
はじめに、オール電化住宅のメリットと、ガス併用住宅のメリットを確認しましょう。
「オール電化住宅」のメリットとは?
オール電化住宅のメリットとしては、次のことが挙げられます。
- 光熱費が電気代・水道代のみになるため家計の管理と節約がしやすくなる
- 家の中で火災が発生しにくい
- ガスに関連する事故がおきにくい
- 生活スタイルによって光熱費が節約できる
- 蓄電、蓄湯できるため、災害時も安心
- 災害時、ガスに比べて電気の方がライフラインの復旧が早い
- とにかくエコ
それでは、順番に詳しく確認してみましょう。
家計の管理と節約がラク
オール電化住宅の場合、日常生活で使うエネルギーは「電気」「水」のみになります。
ガス併用住宅はここに「ガス」が加わりますので、オール電化住宅の方が、支払い先が単純化され、比較的家計の管理がしやすくなります。そのために節約しやすいというメリットがあります。
家の中で火災が発生しにくい
オール電化住宅の場合、家の中で「火」を使うことがありませんので、熱源に火を使うガス併用住宅に比べて火災の発生リスクは低いです。
ただし、クッキングヒーターの熱源に布が触れるなどして火災に発展するケースがありますので注意は必要です。
ガスに関連する事故がおきにくい
オール電化住宅で使われるIHクッキングヒーターや、エアコン、ヒートポンプ湯沸かし器は室内の空気を汚染しないため、ガス式の調理器具や暖房器具に比べて一酸化炭素中毒などの危険な事故が起こりにくいです。
また、ガスを使わないためガス漏れなどの危険もありません。
蓄電、蓄湯できるため、災害時も安心
太陽光発電で作った電気を蓄電するシステムを導入している場合には、電気をためることができます。
また、オール電化住宅で使われるヒートポンプ湯沸かし器は作ったお湯をタンク内にためておくことができるため、万が一災害でライフラインが停止した場合でも一定期間電気やお湯を使い続けることが可能です。
生活スタイルによって光熱費が節約できる
オール電化住宅は、一般的に深夜帯の電気代が安く、昼間の電気代が高く設定されている料金プランによって稼動することになります。
そのため、夜間のみ家で電気を使う共働き世帯などの家庭は、光熱費を大きく削減することができるでしょう。
逆に、日中も誰か家にいて光熱費を使う世帯の場合はガス併用住宅の方が光熱費は安くなりますので生活スタイルの見極めが必要です。
ガスに比べて電気の方がライフラインの復旧が早い
東日本大震災の際には、停電した地域で電気は1週間程度で復旧したのに対して、都市ガスは約5週間もかかりました。
とにかくエコ
光熱費や災害時のメリットについてお伝えしましたが、オール電化住宅は何よりもエコです。太陽光発電や風力発電と併用すれば、エネルギーを自給自足する住宅を実現することもできます。
この点のメリットは、ガス併用住宅には真似できません。
オール電化から「ガス併用住宅にする」メリットとは?
ガスを取り入れる際のメリットについては、次のことが挙げられます。
- 湯切れの心配をせずに、いつでも好きなだけお湯が使える
- お湯が飲用できる
- 生活スタイルによってはガスを取り入れた方が光熱費は安くなる
- 給湯器がコンパクトで低価格
- 熱源器の起動パワーが強い
- ガスコンロの使い勝手
- ガス機器が使える
- 停電でも家庭内の全機能が停止せずに済む
- プロパンガスの場合、災害時でも使える
オール電化住宅のデメリットになる部分についても合わせて順番に詳しく確認しましょう。
湯切れの心配をせずに、いつでも好きなだけお湯が使える
オール電化住宅の場合、ヒートポンプ湯沸かし器でお湯を作るため、一般的には電気代の安い深夜にお湯が作られ、タンク内にため置かれることになります。そのため、お湯を使う際には常にタンク内のお湯の残量や湯切れを心配しなければなりません。
ガス併用住宅の場合は、必要な時に水道管から送られてきた水を給湯器でお湯にするため、蛇口をひねれば好きなときに好きなだけお湯を使うことができます。
お湯が飲用できる
オール電化住宅で使われるヒートポンプ湯沸かし器で作られるお湯は、ほぼ全てのメーカーで飲用を推奨されていませんが、ガス給湯器で作ったお湯は飲用することができます。
生活スタイルによってはガスを取り入れた方が光熱費は安くなる
オール電化住宅のメリットでもお伝えしましたが、日中電気を使うことが多い家庭の場合、深夜割引のあるオール電化住宅の電気プランで暮らすよりも、ガスを取り入れた方が、光熱費は安くなる傾向があります。
この点に関しては、生活スタイルと合わせて導入前によく検討しましょう。
給湯器本体がコンパクトで低価格
ガスでお湯をつくる給湯器は、オール電化住宅で使われるヒートポンプ湯沸かし器に比べてコンパクトで低価格な特徴があります。
ヒートポンプ湯沸かし器のイニシャルコストが35万円程度に対して、ガス式給湯器は機種によって15万円程度で取り付けまで行うことが可能です。
また、設置スペースに関してもヒートポンプ湯沸かし器が2m×44cm程度必要なのに対して、給湯器は50cm×30cm程度のスペースで取り付けが可能です。
熱源器の暖房の起動パワーが強い
ガス式の暖房機は、電気式に比べて起動パワーや起動してから部屋を暖めるまでの力が強い特徴があります。そのため、寒冷地の住宅の場合には冬場の立ち上げにガスの威力があると安心な上、短時間で部屋を暖められます。
ガスコンロの使い勝手が魅力
IHクッキングヒーターに比べて、ガスコンロはさまざまな形状の鍋を使え、鍋を揺するなどの自由な方法で調理を楽しめます。
様々なガス機器が選べて使える
ガスストーブやガス乾燥機など、ガスコンセントを取り付けることでガス機器を使用できます。
停電時に家庭内の全機能が停止せずに済む
オール電化住宅で蓄電池がない場合には、停電が起きると全ての機能が停止してしまいますが、家庭内のエネルギーを電気、ガスに分担することで、ガスが担っている部分については機能が停止せずに使用できます。
プロパンガスの場合は災害時でも使用可
プロパンガスの場合には、敷地内にガスボンベが設置されるため、災害時でもガス管が損傷するリスクが少なく、停電の際や都市ガスが供給停止した際にも使い続けられます。
オール電化住宅のメリットとガス併用住宅のメリットを確認することで、両者のメリットが見えてくると同時に、うまく併用することで互いのデメリットを補い合うことができることがわかりますね。
オール電化とガス併用のコスト比較
オール電化住宅とガス併用住宅の良さを知ると、両者のコストについて気になりますよね。
オール電化住宅のランニングコストと、ガス設備のランニングコストについて確認してみましょう。
3~4人家族が1ヶ月に使うプロパンガスの平均量20m3を基にして、電気と都市ガスで同量の熱量を使う場合を比較してみました。
A. オール電化住宅(調理・給湯・照明全てを電力で行う住宅)
プロパンガスの20m3をオール電化住宅に換算するには、24,000キロカロリー × 20㎥ で計算することができます。
すると、480,000キロカロリーとなり、電気の単位に換算すると558kWhとなります。
この数値を元に、一般的なオール電化住宅向けの電気料金プランをあてはめると次のようになります。
- PM23:00~AM5:00までの基本料金(深夜割引)約17.4円/kWh
- AM5:00~PM23:00までの基本料金 約25.3円/kWh
昼と深夜、それぞれ半分ずつ電気を利用した場合11,913円となります。
B. 都市ガス併用住宅(調理・給湯を都市ガスで行い、照明・電源を電力で行う住宅)
プロパンガスの20m3を都市ガスに換算するには、20×2.2倍で計算することができます。44m3となり、一般的な都市ガスの料金プランをあてはめると6,660円となります。
C. プロパンガス併用住宅(調理・給湯をプロパンガスで行い、照明・電源を電力で行う住宅)
プロパンガス20m3は一般的な料金プランにあてはめると7,100円となります。
同量の熱量分の光熱費を比べると、オール電化住宅>プロパンガス併用住宅>都市ガス併用住宅となることがわかりました。
オール電化住宅の場合、お得に使うためには太陽光発電と組み合わせることや、深夜割引料金を活用することが大切ですね。
オール電化でガスを導入する場合の手順・工事・ポイント
オール電化住宅にガスを併用したい場合、具体的にどのような手順になるのでしょうか。
具体的な内容について確認しましょう。
- 都市ガスか?プロパンガスか?選択する
- ガス導入の規約の確認をする
- ガス併用住宅の場合、ガス設備をどこで使うか検討する
- ガス配管、設備導入工事を行う
順番に詳しく確認しましょう。
都市ガスか?プロパンガスか?選択する
ガス併用住宅にする際には、最初に都市ガスかプロパンガスかを選択します。
都市ガスを利用したい場合でも、都市ガスの配管が自宅のすぐ側にない場合には、選択肢はプロパンガスのみになります。
料金プランやそれぞれの利便性などよく検討した上で選択を行いましょう。
ガス導入の規約の確認をする
オール電化の住宅を建設してから、すぐにガス併用住宅にする場合、住み始めた際の規約を確認して解約金や違約金が発生しないことや、発生する場合にいくらかかるのかを確認する必要があります。
オール電化の電気料金プランを解約する際に、一定の契約年数が定められていることがあり、その年数に達しないうちに解約すると解約金や違約金が発生する恐れがあるためです。
また、自宅建設の際に予めガス配管をしている場合、配管を行った業者にガスの供給を依頼しなければ別途違約金が発生する場合もあります。
このケースは、プロパンガスの場合に多いです。予め建設会社や配管を行った業者に確認しましょう。
手続きに費用がかかる場合、具体的にいくらなのかを確認した上で検討を進めてください。
ガス併用住宅の場合、ガス設備をどこで使うか検討する
ガス併用住宅にすると決めた場合、ガス設備をどこで使うのかを検討する必要があり、選択肢としては次のようになっています。
- 調理設備…IHクッキングヒーターをガス調理器具に交換する
- 給湯設備…ヒートポンプ湯沸かし器を給湯器に交換する
- 暖房設備…床暖房や空調機器をガス式のものに交換する
- ガスコンセント設置…ガスストーブやガス乾燥機が使えるようにガスコンセントを設置する
これらの選択をする際には、現在役割を担っているオール電化の設備を撤去するかを検討する必要があります。
特に、ヒートポンプ湯沸し器については設備自体が大きく、処分費だけで2万円以上かかりますので、撤去・処分を行う際には苦しい決断となるでしょう。
ガス配管、設備導入工事を行う
ガスの供給依頼先と、工事の依頼先、使用する箇所を決めたらガス配管工事と設備の導入工事を行います。
機器のグレードや工事を行う業者によって大きく差があるためあくまで目安ですが、一般的に以下の費用でガス導入工事は行うことができます。
- ガス配管工事…無料~100万円
- 調理設備の交換…10~30万円
- 給湯設備の交換…15~40万円
- 空調設備の交換…15~25万円
- ガス式床暖房の導入…20~50万円
- ガスコンセント設置…一箇所 1~3万円
完成した家に対してガス配管を行う場合には、家の全体に影響を与えますので、床や壁をはがす必要や、外に配管が露出して家の景観を損ねる場合もあります。
新築の際に、予め配管をしておけばこの点に関しては心配がありませんね。
オール電化で日ごろから備えておきたいものは?
オール電化住宅に引き続き住み続ける場合には、気になるデメリットや心配点を補うために次のものを備えておくと安心です。
- カセットコンロ
- 石油ストーブ、カセットストーブ
- 事前のガス配管
順番に使用イメージを確認しましょう。
- カセットコンロ:サザエなどを焼く際など、直火がほしい時に役立ちます。
- 石油ストーブ・カセットストーブ:電気ストーブの機動力が頼りない際や、すぐに部屋を暖めたい際に役立ちます。
上の2点はカセットガスボンベで動き、電池などの電気エネルギーを必要としません。停電時や災害時にも備えておくと安心ですよ。
- 事前のガス配管:オール電化住宅の新築の際には、ガス配管をしておくと将来的にガス併用住宅とした場合に低コストで簡単にガス併用住宅に切り替えることができます。
また、オール電化住宅へのリフォームの場合でもガス配管は残しておくと安心です。
これからの住宅は長く住み継ぐことが当たり前となりますので、どんな事態にも対応できるように準備をしておきましょう。
「オール電化からガス併用へ!」まとめ
オール電化住宅にガスを取り入れるメリット・デメリットや、電気とガスのランニングコスト比較、オール電化住宅にガスを取り入れる方法や目安の費用、オール電化住宅に住み続ける場合に備えておきたいものについてお伝えしました。
オール電化住宅でガスを取り入れる場合は、全てをガスにすることは現実的ではなく、設備導入費などのコストメリットを考慮しても一部のみのガス導入に留めることがおすすめです。
調理器具や給湯設備など、オール電化の住宅で生活するにあたり、何に一番不満を感じているのか?不満を解消するために、いくらまでお金がかけられるか?をよく検討した上で工事に踏み切ってください。
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